プラナカン博物館 ガイドツアー プラナカンの結婚式(下)

前回ご紹介したプラナカンの結婚式の続きです。

嫁入り道具(家具)

プラナカンでは女の子供は遺産相続の権利がなかったそうで、その代わりに結婚の時の嫁入り道具で財産を分けたそうです。

写真のような豪華な家具を娘に送り、家具の引き出しにはお金や債券などを隠して入れていたそうです。

また、家具はこのような中国のもの以外にも

西洋風のものや

中国と西洋が混ざっているような家具もあったそうです。
(この家具のアーチは洋風だが、デザインのモチーフは中国のものが使われています。)

婚礼ベッド

12日間という長い期間行われる結婚式ですが、結婚式の間はあらかじめ新婦の家の一番日当たりのいい部屋に運び込んでおいたベッドで夜をともに過ごします。そのため、結婚生活は新郎が新婦の家に滞在する”マスオさん状態”からのスタートだったそうです。また、このベッドは結婚式の前に親族から選ばれた男の子が赤い服をきてベッドを転げ回り、男の子が生まれる「気」をベッドに振りまくという意味があったそうです。

Chiutau(髪梳きの儀式)の後、初めて対面した新郎新婦はこのベッドが置かれている部屋で最初の食事を共にしますが、このときの食事は、辛いもの、しょっぱいもの、酸っぱいものなど様々な味付けの12品目の料理を食べるそうですが、これは夫婦生活は甘いものだけではなく、辛かったりいろいろあるんだよというメッセージだそうです。
また、この食事の際はテーブルの下でお互いの足を踏み合う遊びをしたそうで、これは足を踏んだ方がその後の家族の実権を握るとされていて、女性が足を踏んだ家族は「かかあ天下」な家庭になるといわれていたそうです。(というか初めて会った男性の足を踏む女性は気が強そうなので、そのまんまといえばそのまんまですが(笑))

ベッドは手前と奥にマットがおいてありますが、結婚式の最中は花嫁が逃げないように入り口側に花婿が寝て、結婚式が終わったら朝食の準備などがあるので花嫁(妻)が手間に寝始めるという笑い話も教えてくれました。

婚礼行列

結婚式の3日目には花嫁の家から花婿の家まで婚礼行列になって移動します。
先頭には両家の名前が入った提灯を運ぶ人が歩き、その後ろを新郎新婦、この結婚をコーディネートした世話役の女性に親戚や友達なども加わり非常に豪華なものだったそうです。

このときの新婦の服装もプラナカンの特徴があり、新婦が着ている服がパープルですが中国では赤のものが使われ、新婦の服の襟にはプラナカンのビーズがあしらわれています。

新郎の家も行列を迎えるために飾り付けがしてあり、狛犬のような置物や提灯を掲げているのが特徴的です。

※写真の家は新郎の家を模しているそうです。

※玄関の狛犬は二匹いますが、左側が雌で、理由は子供をあやしているからだそうで、右のお父さんはボールで遊んでいるそうです(笑)

 

行列が花婿の家に着くと花婿側の家族の年長者にロンガン茶の献茶の儀式を行い、新婦が家族の一員となることを認めてもらうそうです。
また、この際ランタンなどをつるした玄関で写真をとるのが定番で、1階などにある結婚式の写真はこのときの写真が多いそうです。

Sireh

家の中には壺とSireh Setと呼ばれる箱や壺の展示があります。

Sirehとは台湾で檳榔(ビンロウ)と呼ばれるものと同じで、特にプラナカンの女性はたばこが吸えないのでこのSirehという植物の葉で石灰ペーストとビンロウ(檳榔)のスライス、ライムペーストやビターナッツを包み、ガムのように噛んで、石灰を媒体にビンロウの成分のアレコリンが出てくると、これはたばこと同じような覚醒作用があり、それを楽しむそうです。

また、このときに台湾のピンロウ噛みと同じように赤い汁が口の中にたまりますが、これは胃を痛めてしまうために専用の壺にはき出します。

この行為をSireh Chewingと呼びますが、客人が来たときにこれでもてなすのが歓迎の証と考えられていてプラナカンの文化の中でも重要なものだったそうです。

結婚式においてもSirehはとても重要で、プラナカンの結婚式はSirehに始まってSirehに終わるとも言われており、結婚の前の家族同士の最初の話し合いの際は、花婿の母親が花嫁の家に赴き、歓迎の証として花嫁の母親は花婿の母親をSirehでもてなします。また、結婚式の最後の日には花嫁は花婿の家に入るときには花嫁のSireh Setを手に持って入ります。また、最終日まで新郎新婦で過ごして、花婿が花嫁の貞節が疑わしいなどの重大な問題を見つけて結婚を破談にするときにはこのSireh Boxをひっくり返して置くことが破談の合図になっていたそうです。

Sireh Chewingは発がん性が指摘され口腔ガンの原因になることがわかってすっかり廃れてしまったようですが、今でもリトルインディアでまだできるお店があるそうです。

 

ガイドツアーはプラナカンの生活の展示に続きます。