プラナカン博物館 ガイドツアー プラナカンの結婚式(上)

プラナカン博物館のガイドツアー 前回の続きです。

プラナカンは元は商人だったこともあり、シンガポールの交易の成功によってかなり裕福な暮らしをしていたそうです。特に象徴的なのが結婚式で、プラナカン博物館でも2階をまるまる結婚式の展示に使っているほど力を入れています。

この写真はプラナカンの結婚式で使われた装飾品の品々で、特に真ん中にあるダイヤのスターブローチはダイヤをふんだんに使った品で、当時のプラナカンがどれほど裕福だったかうかがい知ることができると思います。

また、ダイヤの両サイドにある冠も結婚式で使われているものですが、ペナンとシンガポールで形が違い、シンガポールのものは174個のピンで作られていて女性の髪を留めながら頭に固定するそうです。

※シンガポールのプラナカンの結婚式で使われた冠

※ペナンのプラナカンの結婚式で使われた冠

このように高価な装飾品を使ったプラナカンの結婚式は大変豪華で、なんと12日間にも渡って行われる結婚式は盛大に行われたそうです。

プラナカンの結婚は日本でも昔はそうであったように恋愛結婚ではなく、お見合いのようなコーディネーター役の女性が仲介し家長同士で決められるもので、結婚相手は結婚式が始まるまで会った事がないというのが一般的だったそうです。

プラナカンの子供は12歳頃から男女が別れて生活するようになり、特に女子は12歳になると外出が許されなくなり、花嫁修業として礼儀作法や料理、ビーズ刺繍を習います。プラナカンの家には外に出れない女の子が来客者などを除くためにの穴が開いている所もあるそうです。

花嫁が14~16歳、花婿は16~18歳位が当時の結婚適齢期だったそうで、結婚はコーディネーター役の女性が適齢期の女の子がいる家の近くで台所の音を聞いたりビーズ刺繍の出来を見たりして見極め、アレンジをしていたそうです。また結婚の日程は縁起をとても大切にするプラナカンらしく、八字という占いで結婚式の日程は決められていたそうです。

2階のプラナカンの結婚のエリアでは12日間かけられて行われる結婚式の様子がわかる品物が時系列で展示されています。

結婚の祝いの品の交換(結納)

結婚式の数日前には日本の結納に当たる儀式が行われ、新郎と新婦の家族の間でお祝いの品を交換します。通常新郎の家族が多く贈り物をして、新婦の家族からのお返しはその半分程度だったそうです。

※結婚の祝いの品を運んだ入れ物。

※こちらは結婚式の最中に食べ物を運ぶための入れ物だそうです。

結納の品の品目は決まっていて、花婿が花嫁に送るものと、花嫁が品物を受け取ったあとに返すものが決まっているそうです。

花婿の家族は宝石を花嫁の家族に贈り、宝石は通常ブローチ、イヤリング、ブレスレット、ベルトと指輪が送られます。赤い封筒に現金を入れて渡すこともあったそうです。
それに対し花嫁の家族は花婿にベルトや指輪、時には時計なども花嫁の家族から返されます。

また、生の豚足を花婿が贈り、花嫁は豚の足の足先だけを切って花婿に返します。

特に調理されていない豚の足を花嫁が受け取ることは純血の証で、花嫁は一部分だけ切り取って花婿に返すことで、花婿を家族の長と認めたことになるそうです。結婚のお祝いで食べ物を送るのはいい妻の条件が料理がうまく、家族をケアすることだと考えられていた為という事もあるそうです。

そのほかの品は花婿の家族が2本の鳳凰の柄のキャンドル、縁起の良い8つのオレンジ、2本のブランデーが送られ、鳳凰の柄のキャンドルはウェディングの間花嫁の先祖を祭るため、ブランデーは花婿の象徴、オレンジは黄色が縁起が良いとされ、丸い形が長生きを象徴しているそうです。
花嫁は花婿にそのお返しとして、新郎の家にはドラゴンの柄の2本のキャンドル、ブランデーのお返しにシロップ、オレンジの代わりにロンガンを送りました。

特に果物やシロップは”甘い”新婚生活となるようにとの思いが込められているそうです。

また、新郎の家族からは一本の白い生地を新婦の家族に贈ります。これは後述する結婚式中着ている白い肌着を作るためです。
花嫁からはその生地から作った新郎用の肌着と、この日のためにずっと技術を磨いていたビーズ細工(スリッパ等)が贈られ、この肌着とビーズ細工贈り物の出来を見て花婿の家族はいい人を家族に迎えたと喜んでいたそうです。

Chiu tau(髪梳きの儀式)

結婚式は12日間行われますが、最初の日はそれぞれの実家で同じ時間に別々にChiu tauという髪梳きの儀式というものが行われます。執り行う時間も非常に重要で、暦に従って深夜から夜明けの決められた時間に行われます。

これは先祖にこの結婚を認めてもらうもらうための儀式で、Ting Kongという先祖を奉った祭壇の前に先祖の写真などをおいて執り行ったそうです。中国の文化では結婚と成人は密接な関係があると考えられていて、この儀式を執り行うことで成人として認められ、結婚して家族を持つことができるようになるという意味もあるそうです。

また、この儀式は結婚の祝いの品の交換の時に新婦に贈った一枚の白い布から作った白装束を新郎、新婦それぞれ着て儀式を執り行い、髪梳きの儀式の後も下着として着続けるそうです。結婚式が終わったらその後は保管しておいて、次に使うのはそれぞれのお葬式での死に装束になるそうで、これは死後あの世にいっても夫婦はこの結婚式で作って着ていた服を頼りにお互いを見つけるのだそうです。

髪梳きの儀式ではGantangと呼ばれる樽のような米の計量カップ(上の画像の真ん中にあるもの)に座りますが、花嫁が座る場合はそのまま置き、花婿が座る場合はひっくり返して置いてあるそうです。(写真は花婿用みたいですね)

その後真っ赤なイクソラの花とネギを頭の上で振り動かして幸運と長寿を祈り、クシ、カミソリ、定規、はさみ、鏡などを頭に当てて調髪のしぐさをまねして大人になることの責務などを表します。
(髪梳きの儀式とは言え、実際には髪は切らないそうです)

頭に当てる品物にはそれぞれ意味があって以下のような感じだそうです。
クシ:スムーズに物事が進むように
カミソリ:物事に慎重になるように(焦ると切ってしまう)
定規:定規のように公正に(定規はどんなときでも尺が変わらない)
はさみ:夫婦で協力して(はさみは刃が二枚無いと切れない)
鏡:物事の本質が見抜けるように

またその際、花嫁はこれから家を出るので玄関を向いて、花婿は家の中を向いて行うそうです。
また、そのほかにも置かれている本は中国の暦、3.5mの赤い糸(長寿を祈って)も用意するようです。

お互いの家でそれぞれ髪梳きの儀式を行った後は新郎が新婦の家に行き、儀式を続けますが、この中で新郎は新婦の顔を覆うベールを外して初めて対面となるそうです。

Sam Kai(三界)

Sam Kai(三界)とは中華系プラナカンの最も神聖な祭壇で、三界は天国、地球、男を表し髪梳きの儀式等の重要な儀式の時のみ組み立てられます。
この祭壇には家族の中でも年長の男性しか触ることは許されなかったそうです。

髪梳きの儀式の歳には三界の下で、白檀が燃やされさわやかな甘い香りが漂っていたそうです。

 

結婚式の展示について続きは次回の掲載とさせて頂きます。